2016年10月31日月曜日

21世紀パンロン会議「意見集約より、意見を述べ合う場として有益」





8月から9月にかけて行われたミャンマーの少数民族問題を解決するための「21世紀パンロン会議」に公式参加した在日ミャンマー人の政治活動家、ゾウミンカイン氏(ミャンマー人少数民族ラカイン族出身)が、10月30日、東京都豊島区で同会議の報告会を行った。

パンロン会議とは、イギリス領から独立する1947年に、ミャンマーでビルマ族と少数民族が、連邦制を軸にした国家樹立を決定した会議。現在のミャンマーが連邦制を採用する由来となっている。

ただし、政府、ミャンマー国軍、少数民族武装勢力代表ら、さまざまな背景を持つ人々が意見を出し合う21世紀パンロン会議場では、「1947年のパンロン会議で約束された連邦制の樹立、また少数民族とビルマ族間の平等が実現しなかったために、少数民族の関係する紛争が収まらず、ミャンマー国家の社会・経済発展が立ち遅れた」という主張が相次いで出された。

また少数民族代表の中には、「現行の行政区分7管区7州ではなく、7州以外の民族ごとの州を認めるべきだ」との意見や、「ビルマ族が管区を持つ意識ではなく、ビルマ州を設立するのはどうか」と述べる人もいた。一方で、少数民族ごとの州設立は現実的ではなく、地理的に区分しやすい州を作っていくべきとの意見も出されている。

ゾウミンカイン氏は、ミャンマー国軍と少数民族武装勢力の間における最大の不一致点は、「ミャンマー国軍は、先に少数民族が武器を捨てれば、協議に応じると主張する。一方で少数民族武装勢力は、先に休戦に向けた協議を行ってから、武器を捨てると主張していること」と述べる。

アウンサンスーチー国家顧問は、21世紀パンロン会議閉会式の挨拶において、「この会議で正直に意見を述べた方々は、報復を恐れる必要はない」とミャンマー国軍への牽制とも取れる発言をした。実際、少数民族と国軍との衝突は、一部地域で現在も続いており、同会議は、ミャンマー国軍と少数民族武装勢力との間に、意見の溝があることを、あらためて明らかにした場だった。

だがゾウミンカイン氏は「前回のパンロン会議から70年近く経っている今、前と同じパンロン会議の決議が生きるわけではない」とした上で、「21世紀パンロン会議は、今すぐ決議を出す意味合いを持つものではなく、長期的に意見を述べていく場である」と今会議を定義する。さらに「意見集約より、意見を述べ合う会議として意義があった。その中で合致する意見があれば、今後の国家戦略のフレームワークとして活かしていければ」と、ミャンマー国家発展への展望を語った。
(深山 沙衣子)

0 件のコメント:

コメントを投稿