第2回21世紀パンロン会議が閉幕 37項目合意
ミャンマーの首都ネピドーで、2017年5月24日~29日の6日間、和平について話し合う「21世紀のパンロン会議」が開催された。同会議は2016年8月に続き2回目。
会議に出席したのは政府、国軍、停戦協定(NCA)に合意した少数民族武装勢力8団体、国会、市民団体、国際機関代表ら約700人。NCA未署名の少数民族武装勢力7団体は、オブザーバーとして会議に参加した。
会議では、協議事項41項目のうち37項目(下記参照)で合意に達した。合意項目は政府が恒久平和の基礎とすべく締結を目指している連邦協定の一部となる。アウンサンスーチー国家顧問は「和平への重要な一歩を踏みだした」と述べ、同合意を具体的な成果として評価している。一方、少数民族の連邦からの分離と、国軍と少数民族武装勢力の平等については合意に至らず、次回に持ち越しとなった。
【合意した37項目】
合意に達した37項目は以下の通り。
▽ 政治分野
1. 主権‐連邦国家の主権は国民に属し、国家全体に及ぶ
2. 主権の実行‐立法、司法、行政の三権分離
3. 平等‐少数民族は政治・人種において平等で、独自の言語、文学、伝統、文化を守り保持する権利を持つ
連邦国家の原則(組織と三権分離)
4. 民主主義と連邦制を基礎とした連邦国家を建設する
5. 民主主義と連邦制を基礎とした国家は、管区(Region)と州(State)により構成される。※管区と州は平等の立場をとる。具体的な管区と州の名称は今後議論する。
6. 民族の名称を冠した自治地区・地域を組織する
7. 三権分離は、連邦、管区、州、自治地区・地域にも適応される
8. 管区と州には立法権、行政権、司法権が信託される。連邦憲法の定めの下、管区ならびに州議会は立法権、各内閣は行政権、各高等裁判所は司法権を行使できる
9. 連邦政府、管区、州の内閣は、法にのっとり、徴税、開発プロジェクトの実施、資源を利用する権利を持つ
10. 連邦、管区、州の間での争議、また管区と州間の争議を扱う独立した法廷を設置する
複数政党による民主主義
11.複数政党による民主主義を実行する
12.憲法に則り、自由で公正な選挙を実施する
▽ 経済分野
連邦経済の原則
13.市場経済の効率的な実施
14.連邦国家、管区、州、自治地区・地域のすべてのレベルで確固とした法律、付属定款、規則、規律を策定し、市場経済を効率的に実行するよう公布する
15.貧困撲滅のために生活水準を上げ、富裕層と貧困層の社会経済格差を是正、持続可能な開発を目指す。既存の政策、法律、定款に沿い、民間セクターを推進する
16.法律に則り、国家の利益を損なう経済行為を阻止する
17.一個人や一組織による経済の独占を阻止する法律を公布する
18.国家、管区、州、自治地区・地域に、経済開発機会を平等に提供するための必要な行動をする
19.憲法に則り、国家予算を国家、管区、州、自治地区・地域に公平・公正に割り振る
20.憲法に則り、経済分野の経営権を国家、管区、州、自治地区・地域で分け合う
21.短期・中期・長期的な経済プロジェクトを作り、透明性や説明責任を持って実行する
▽社会分野
22.災害や紛争、人々の活動が原因で発生した国内避難民や難民の永続的な解決を目指すプログラムを、国際人権規範に従い、差別することなく整然と実施する
23.国内避難民や難民が、故郷または他の適した安全な場所に居住できる環境を整える
24.高齢者、障がい者、女性、子どもが、その人種や宗教、貧富に関係なく権利を享受できる社会経済をつくる
25.麻薬の売買を防ぐ計画を策定し実行する
地域開発の原則
26.人材育成と社会・経済開発をすすめるために、連邦政府、管区、州政府と自治地域・地区政府がお互いに調整しながら、地方包括的開発計画を策定し、実施する。(注:連邦政府の原則や法律に反しない範囲に限る)
27.現行の法律に沿うかたちで、国内・海外投資を呼び込むための持続的な計画とプログラムを策定する。そして、管区、州、自治地区・地域の社会経済開発のために実行する
▽ 土地、自然環境分野
28.バランスのとれた国家横断的な土地政策と、人と中心とした長期的な開発を支援する
29.同分野において、公正さと適切さに基礎を置く
30.同分野において、中央集権を軽減する政策をとる
31.土地政策を策定する際、人権、国際的、民主主義、連邦制の規範を取り入れる
32.土地政策は透明性や明確性を有する
33.地元住民の希望が優先され、農民の要求を考慮する、土地開発に関する政策を策定する
34. 全ての国民は土地法に基づき土地を所有し経営する権利を持つ。
35.女性と男性は、土地所有に関して平等な権利をもつ
36.所有理由に沿った土地利用が特定期間確認されない場合、国家は土地所有権を取り消し、他の利用者に与えることができる
37.自然環境を保護し、少数民族が大切にする社会習慣や文化・歴史的遺産につながる土地の損害や破壊を防止する
【NCA未署名の少数民族武装勢力の動向】
今回の会議では、中国とミャンマーの国境地帯で活動するNCA未署名の少数民族武装勢力の動向が注目された。同勢力の参加可否が恒久和平プロセスの成功に大きく関与すると考えられるためだ。
オブザーバーとして参加したNCA未署名の少数民族武装勢力7団体は以下の通り。
ワ州連合軍 United Wa State Army
シャン州進歩党 Shan State Army North/Shan State Progress Party
カチン独立機構 Kachin Independence Army
民族民主同盟軍 National Democratic Alliance Army
※タアン民族解放軍 Ta’an National Liveration Army
※コーカン族ミャンマー民族民主同盟軍Myanmar National Democratic Alliance Army(Ethnic Kokang)
※アラカン軍Arakan Army
(※は、第1回21世紀パンロン会議を欠席し、今回初参加した勢力)
2016年8月、第1回21世紀パンロン会議を不服として途中退席したワ州連合軍(UWSA)は、2017年2月にNCA未署名の少数民族武装勢力6団体を同軍の本拠地であるパンカンへ招き、会合を開催した。政府が主導する、NCA署名を中心とした和平の枠組みを拒否し、中国が仲介する新たな和平プロセスへの参加を呼びかけた。
UWSAは2017年4月にも会合を主催し、自身も含む参加7団体で少数民族連合(Federation of Ethnic Nationalities:FEN)を結成した。
5月、FENに参加したカチン独立軍(KIO)とシャン州進歩党は、NCA未署名の少数民族武装勢力の連合組織である統一民族連邦評議会(UNFC)から離脱した。
一方、アウンサンスーチー国家顧問は、5月に訪中した際、中国政府にこれら武装勢力のパンロン会議参加を促すよう働きかけた。結果、FEN加盟7団体は連邦政策交渉協議委員会(Federal Political Negotiation and Consultative Committee)を組織し、オブザーバーとして参加に至った。
第2回21世紀パンロン会議開催期間中、アウンサンスーチー国家顧問は7団体を3グループに分けて非公式に会談を持った。合意事項はないが、今後も対話を続けることには同意した。カチン独立機構のバンラ副議長は「今後、そう遠くない日に政府と会合をするだろう」と語った。
(参考)
・NCA署名済みで会議に参加した8団体は以下の通り。
チン国民戦線Chin National Front (CNF)
全ビルマ学生民主戦線 All Burma Students’ Democratic Front (ABSDF)
アラカン解放党Arakan Liberation Party (ALP)
シャン州復興評議会 Restoration Council of Shan State (RCSS)
カレン民族連合Karen National Union (KNU)
カレン民族解放平和評議会Karen National Union/Karen National Liberation Army (Peace Council) (KNU/KNLA PC),
民主カレン仏教徒軍 Democratic Karen Buddhist Army (DKBA),
パオー民族解放機構 Pa-O National Liberation Organization (PNLO).
・会議に参加しなかった、NCA未署名の少数民族武装勢力5団体は以下の通り
カレニー民族進歩党 Karenni National Progressive Party (KNPP),
新モン州党New Mon State Party (NMSP)
アラカン民族評議会Arakan National Council (ANC)
ワ民族同盟Wa National Organization (WNO)
ラフー族民主同盟 Lahu Democratic Union (LDU)
【連邦からの離脱について】
1961年に少数民族の分離行動が起こった。1962年3月に軍事政権が誕生すると、連邦制は禁止されたが、2011年の政権交代で再び連邦制が注目されている。
国軍は、少数民族が連邦政府から離脱しないという誓約を必須としている。政府と連邦議会も非離脱の表記を支持する方針。一方で少数民族武装勢力は非離脱表記を拒否し、第2回21世紀パンロン会議では議論が平行線に終わった。
(Global New Light of Myanmar、Mizzima、Irrawaddy、DVB、BurmaLinkよりJMSA抜粋・翻訳)
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