2022年8月8日月曜日

2022年7月19日更新 【今日のミャンマーニュース】「ミャンマーにおける中国の3大インフラ構想に注目」

 中国がミャンマーを通じてメコン諸国との関係再構築を目指す重要なメッセージを発信することを目的に、ミャンマーでランカン-メコン協力会議(LMC)の共催が予定されている。

これに先立ち、中国外相が今月上旬に内戦で荒廃したミャンマーを訪問した。

北京による戦略的かつ経済的利益が集中するミャンマーにおいて、王毅外相の訪問後中国は、3つの野心的な計画を練りつつも慎重に状況を注視している。

中国は、ミャンマーのリスクが少ない地域で野心的なプロジェクト実施を検討しているとみられる。

こうした計画は、ミャンマー国内での中国の経済的かつ政治的影響力を飛躍的に高めるだけでなく、シャン州東部と北部で中国と同盟関係にある民族武装組織(EAO)に地政学的な優位性を与えようとするものである。

欧米諸国が政権の人権侵害を理由にミャンマーを敬遠する一方、中国はミャンマーのインフラプロジェクトにおいて唯一の関係国となり、政権の私腹を助長することになりかねない。

情報筋によれば、LMCによる新たな国際陸海空貿易回廊によりミャンマーに対して中国の経済的依存度をより高めることで、ミャンマーは中国にとっての「お得意様」国家になることは不可避となるだろう。

LMC プロジェクト

中国による一方的なダム建設の実施を受け、6カ国(中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)で構成されるメコン川流域諸国の小規模地域協力機構「LMC」が設立された。

2016年以降中国は、文化的イベント、農業プロジェクト、そして地域間をつなぐインフラプロジェクトに至るまでメコン諸国にとって積極的な関係国かつ保証国として実績を上げてきた。

ミャンマーでの会合の際に中国は、農業、水資源、デジタル経済、航空宇宙、教育、公衆衛生に関わる6つの協力プログラムを提案した。

しかしLMCの主な目的は、中国-ラオス間を結ぶ鉄道の建設など各国間の輸送インフラプロジェクトや国境を越えた経済協力を売り込むことである。

中国は昨年8月、ミャンマー軍事政権に600万米ドル以上を拠出し、文化、農業、科学、観光、動物ワクチンを含むLMCの下で行う21のプロジェクトに資金援助を行うことを発表した。

ミャンマーのワナマウンルイン外相との会談で王氏は、「LMCの質を高め、向上させる」ことを目的に、北京はミャンマーとの調整および協力を強化する旨意を示していると伝えた。

これを受け、中国が資金提供を行うメコン-ランカン協力国家調整ユニット(ミャンマー)がミャンマーに発足した。

中国とミャンマーの関係に詳しい地元のオブザーバーによれば、王氏の訪問は、一部の中国国内のアナリストからは否定的な意見が出ているものの、北京がLMCを通じて政権を全面的に支援していることを示しているという。

クーデターにより生じた政治的かつ社会的危機を緩和するため、軍事政権は外国からの投資を切に願っているのである。

「もしこの国が完全に無政府状態に陥れば、中国にとって悪夢となり、中国はそれを(自国の利益のために)心配しているのです」と当オブザーバーは語った。

LMC下での中国は、シャン州東部のあまり知られていない戦略的な港湾プロジェクトなど様々な分野でミャンマーに対して積極的な支援を行っている。

中国大使館は先月初め、LMC特別基金の支援を基に実施予定のワンポン港の改修工事プロジェクト履行に向けた調査が終了したことを発表した。

また中国は、2018年から同港を地域の貿易拠点とするために数百万ドルの投資を行ってきた。

中国大使館によれば、当プロジェクトの調査には、環境や社会に与える影響評価、費用の見積もり、設計計画や運用研修プログラム等が含まれているとのことである。

シャン州東部のタチレイ地区に位置し、メコン川に面する戦略的な港湾であるため、中国にとってメコン地域への影響力を強めるには重要なプロジェクトである。

北京は、ワンポン港をメコン川流域の主要港の一つにすることを公約として掲げている。

この港は、ラオスとの貿易に大きな役割を果たすとともに他の大メコン圏(GMS)諸国を結ぶ道筋を開くものになる。

さらにコロナ蔓延時には、ミャンマーはこの港からラオス経由で中国に米を輸出していた。

このワンポン港の拡張工事の完成で輸送用コンテナの取り扱いが可能となり、ミャンマーとGMS諸国との貿易が活発になることが期待されている。

またこの計画により、シャン州東部での中国の経済的影響力が高まる。

ミャンマー国内で軍事政権が発足して以降中国は、シャン州東部を含むサルウィン川東部の支配権を獲得するために積極的に活動を行っていた。

さらにLMCにおいて、サルウィン川の水力発電所の再開やサルウィン流域のいわゆる開発プロジェクトを大メコン圏プロジェクトの一部として扱うことが中国にとって主要な優先事項の一つとなっている。

中国は、シャン州での巨大ダムの建設計画以外にもサルウィン川沿いに少なくとも7つのダム建設を計画している。

中国とタイの企業による共同開発として計画される7,000メガワットのモンタンダムは、シャン州ではタサンダムと呼ばれ、国内最大の水力発電ダムとなる。

地元住民の強い反対にも見舞われたが、ダムは計画段階に入っている。

この動きにより中国の経済的かつ政治的影響力が高まり、中国とワ州連合軍(UWSA)を含むこの地域の同盟EAOに対して経済的かつ地政学的な優位性を与えることになる。

軍事政権発足以降の中国はというと、同盟関係にあるEAOの協力を得ながら中国-ミャンマー間の経済回廊(CMEC)沿いやサルウィン川東岸に緩衝地帯を設けることに力を入れている。

同盟関係にあるEAOとシャン州復興評議会(RCSS)との間で起きている紛争を考慮し、中国は友好的なEAOにこうした地域の領有権を確保するよう訴えているようである。

さらに重要なことは、サルウィン流域での高まる中国の影響力により、サルウィン川の水力発電所の再開やサルウィン流域のその他の開発プロジェクトがLMCの一部となる可能性があるということである。


 (2022年7月11日 イラワディよりJMSA翻訳)



 


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