ミャンマーの事実上のリーダーであるアウンサンスーチー氏は、イスラム教徒ロヒンギャに対する政府の軍事的攻撃に対する批判に曝されながらも、2016年に彼女の政党が与党となった後に、軍に対する立場を軟化させたという主張を否定した。
ラジオフリーアジアのインタビューで、スーチー氏は、軍事政権の間、自宅軟禁になっていた頃から今も、ミャンマー国軍の将軍たちに確固たる態度を堅持していると述べた。
さらにスーチー氏は、彼女の政党、国民民主連盟(NLD)の目標は「当初から」国民和解だと付け加えた。
2015年の選挙で勝利する前に、10年以上の自宅軟禁されたスーチー氏は、軍隊自体を批判したことはないが、その行動だけを批判している。
2017年8月25日に、ロヒンギャ武装勢力が警察に致命的な攻撃を仕掛けて以来、ミャンマーのラカイン州イスラム教徒に対する治安強化のため、国軍は国際社会から厳しい批判を受けている。
陸軍主導の治安部隊が出動したことで、国連によると1000人以上が死亡し、50万人を超える人が近隣のバングラデシュに逃げ出し、国際的な人道危機を引き起こした。
9月19日、アウンサンスーチー国家顧問は、同危機以降の演説で、国軍の「掃討作戦」は9月5日に終わったと主張した。またラカイン州の人権侵害を非難し、違反者は罰せられると述べたが、国軍を強く批判したり、国連による民族浄化との訴えには応えなかった。
英国はミャンマー人への軍事訓練プログラムを中止し、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今回の件を「受け入れられない民族浄化」と非難した。一方、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ラカイン州内のすべての軍事作戦を終了するよう求めた。
彼女へのインタビューでは、アウンサンスーチー氏は、2012年より取り組み、成し得なかったこととして、軍の効果的な拒否権廃止という、ミャンマー憲法の主要条項の取り消しができなかったと述べた。
「私たちは法律の枠内でこれを公然と行い、議会内でも引き続き変更を訴えるつもりだ」
ミャンマー憲法下で、アウンサンスーチー氏は大統領になることを禁じられ、安全保障問題に効果的な役割はない。だが彼女が党首を務めるNLDは2015年の選挙で大勝した。軍は3つの重要な安全保障関連省庁を運営し、議会の議席の25%を割り当て、2人の副大統領の1人を任命する。
アウンサンスーチー氏は、9月19日火曜日に各国外交団をラカイン州訪問に招待したことも引き合いに出し、ロヒンギャ危機を国際社会と協力して解決することを望んでいると指摘した。「誰もこの時代に孤独に生きることはできない。 グローバリゼーションが標準であり、グローバルに活動するには、十分な勇気が必要だろう。外からの(ラカイン州への)訪問を禁止すれば、隠すべきものがあると思われる。だが結局、私たちは自国の発展のためには、自分自身を頼りにせねばならないということだ」と述べている。
一方で、国連の人権捜査官は、ロヒンギャの危機を調査するためにミャンマーへの「完全で自由な」アクセスが必要だと述べたが、アウンサンスーチー政府は、国連調査の拒否を再度明らかにした。
ミャンマー国連大使ティンリン氏は、人権理事会に対し、「このような任務を遂行することは、すでに複雑なラカイン問題を解決するうえで有益なコースではないと考え続けている」と述べている。
ラカインの状況について、国連を含む国際社会のコメントについてどう思うかという問いかけに、スーチー氏はこう回答した。
「これらのコメントはもちろん、国にとっては良いことではない。 しかし、真実がどれほどあるか、証拠が何であるかを調べなければならない。それ(国連や国際社会の批判)が真実ならば、現状を正す必要がある。一方でそれが真実でないなら、なぜ彼らが事実と異なることを言っているのかを突き止めなければならない」
(RFAよりJMSA抜粋翻訳)
アウンサンスーチー国家顧問、ラカイン州でのあらゆる人権侵害を非難
9月19日、アウンサンスーチー国家顧問は首都ネピドーで、ラカイン州での出来事について各国外交官を交えた聴衆に向け25分間にわたり演説した。「この紛争に巻き込まれたすべての人々の苦しみについて深く思いを馳せている」と述べ、ミャンマーは必要な行動をとる準備ができていると語った。以下は彼女の英語スピーチの抜粋翻訳。
「世界中がラカイン州の状況を懸念している。ミャンマー政府はその責めから逃れたり責任を放棄するつもりはない。我々はあらゆる人権侵害や非合法な暴力を非難する。人権侵害や、調和、安定、法の支配を弱体化させるすべての行動は、厳格な正義規範に基づき取り扱う。国家全体に、平和と安定、法による支配が行きわたるように行動している」
「治安部隊は行動規範を厳格に守り、全ての職務に自制をもってあたり、罪のない市民を害せず、市民の巻き添え被害が出ないようにあらゆる手段を講じるように教育されている」
「(ラカイン州の出来事について)様々な疑惑や、その疑惑に対する異議がある。私たちはその全てに耳を傾けなくてはならない。そして行動を起こす前に、その疑惑が確固たる証拠に基づいていることを確認しなくてはいけない。法に反する行為をしたり、国際的に認識されている人権を侵害するすべての者に対して、人種、宗教、政治的立場にとらわれることなく、対応していく」
「我々は、なぜこのような集団脱出が起きているのかを知りたい。逃げた人たちと、その地に留まっている人たちと話がしたい。イスラム教徒の住む村々のうち50%以上は何の被害も受けていない。
バングラデシュに逃げた難民の帰還については、1993年にバングラデシュとの間で交わされた共同認証プロセスに従って受け入れる準備がある。ミャンマーからの難民だと承認された人々は、何の問題もなく受け入れられ、彼らの安全や人道支援へのアクセスは完全に保証されるだろう」
「ミャンマーは国際的な調査を恐れてはいない。演説を聞いた各国外交官のうち私たちの努力に参加したい人がいれば知らせてもらいたい、ミャンマー政府は訪問者が紛争地域に住む村人と話す機会を持てるように同地への訪問をアレンジできる」
●演説に対する各国の外交官の反応
各国外交官は、演説を歓迎した。ビム・ウダス・ネパール大使は、「アウンサンスーチー国家顧問は人権問題、国内避難民、ラカイン州に住む人々に対する立場を明確にした。コフィアナンが率いた国連調査団の推薦事項の履行にも言及した。『非難の応酬ゲーム』は問題解決の過程で誰の役に立たないだけでなく、誕生して18カ月経過していないミャンマー現政権が実施している努力や発展を弱める、または失敗させてしまうだけだ」と述べた。
ホン・リアン中国大使は「全世界がミャンマーの立場をより深く理解したことはとてもよいこと。世界中が歓迎している」と語った。
ヴィクラム・ミシリ・インド大使は、演説には肯定的なメッセージが含まれていると歓迎し「国際社会はミャンマー政府のチャレンジを支援する用意がある」と述べた。
ニコライ・A・リストパドフ・ロシア大使は演説内容が建設的だと評価し「我々は暴力を強く非難し、問題を解決に向けたミャンマー政府の努力を支援する。ラカイン州に住む人びとが安全に、平和に、安定した生活を送ることが重要だ」と述べた。
アメリカ大使館はミャンマー・タイムズ紙の取材に対し、赤十字国際委員会を経由した人道支援の実施が約束されたことを評価し「さらなる詳細を楽しみにしている」と述べた。
(Myanmar Times、Democratic Voice of BurmaよりJMSA抜粋・翻訳)
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